専門学校/授業「医療漢字・医療読解」を担当しての備忘録~ 1.「医療漢字」の概要~
今年の4月から看護系専門学校では、授業「医療漢字・医療読解」を担当している。週に1時間(90分)だけの授業である。
主な授業内容は、1.医療漢字の読み書きの習得、2.「医療読解力」の向上(「医療読解力」とは...?)。前任の先生が作成した年間カリキュラムと教材は引き継いだが、その多くが私の授業スタイルに合わず、結局ほとんど作り直すことになった。
授業を担当して、はや8ヶ月が過ぎようとしている。googleで検索してみても、「医療漢字」を含んだ名称の授業を開講している専門学校は多くはないようなので、授業で扱っている内容について備忘録として記しておきたい。
〈目次〉
1. 「医療漢字」の概要
2. 「医療漢字」で用いた教材
3. 漢字の効果的な暗記方法とは...?
4. 授業スタイルのルーティーン
5. 「漢字嫌い」と「いまの時代に漢字書く...?」
1. 「医療漢字」の概要
年に2回ある医療秘書検定に医療漢字の読み書きで出題されるので、その対策を行うことが学校からは命じられた。3級には例年、5問の「読み」。2級は例年10問の「書き」が出題される。例えば、今年行われた第61回の2級では次のような用語を漢字で書く問題が出題されている。
・のうこうそく ・おうかくまく ・きょくしょますい ・ぜんどううんどう ・しゅちょう
・Diabetes mellitus ・Hepatic cirrhosis ・Spinal cord ・Stomach ・Bronchial asthma
年々傾向は変わるが、数年前から10問のうち、英語で表記されている医療用語を漢字で書く問題が出題されている。(2018年度版 医療秘書技能検定実問題集2級(2))
教材研究を行う上で、もっとも骨が折れたことは私自身が医療漢字に詳しいわけではないということである。一般常識以上の知識は持ち合わせておらず、偉そうに教えられる立場ではなかった。(なぜ私が採用されたのかも定かではない)
そもそも、「医療漢字・医療読解」という授業の立ち位置が微妙で、生徒たちは他に「診療報酬基礎」や「基礎生理学」、「臨床医学」など多くの授業を履修している。そのため、それぞれの授業で扱っている医療用語を、改めて「医療漢字・医療読解」で取りあげる必要があるのかとすら疑問に思う。この点が、全国の専門学校で「医療漢字・医療読解」という授業が多くない理由なのかもしれない。言うならば、高校で「生物」の授業に加えて、「生物漢字」という授業がある感覚である。
生徒のことを第一に考えると、「診療報酬基礎」や「基礎生理学」、「臨床医学」などの授業で出てきた用語を、「医療漢字」としてもう一度取りあげ、その漢字の読み書きを丁寧に指導するべきであろう。しかし、そのためには、それぞれの先生と連携を取る必要があり、非常勤講師の私が受け持つべき業務量を遙かに超える。
そのような理由から、前任の先生は、独自に医療用語が並んでいるリストを作成し、リストにある医療用語の読み書きを覚えさせるカリキュラムを作成していた。
問題は、そのようなリストからでは、生徒はそれぞれの医療用語の意味を理解することが難しいということである。もちろん、漢字からある程度推測することができたとしても、その他の授業でまだ扱っていない医療用語では正確な意味を理解することは難しい。漢字の読み書きを覚えるにしても、その意味を合わせて理解しないと効率が良くないと思われる。(そして、楽しくない。)
私が採用されてから、初回授業を迎えるまでに行わなくてはならないことは、まずは教材を決めるということからであった。そして、その教材をどのように扱うことが効果的であるかを検討することであった。
( 1.「医療漢字」の概要 おしまい)