悠々自適

専門学校/授業「医療漢字・医療読解」を担当しての備忘録~ 2.「医療漢字」で用いた教材~

〈目次〉

1. 「医療漢字」の概要

2. 「医療漢字」で用いた教材

3. 漢字の効果的な暗記方法とは...?

4. 授業スタイルのルーティー

5. 「漢字嫌い」と「いまの時代に漢字書く...?」

 教材選びの難しさ

 生徒が医療用語を読め、書けるようにするために、どのような教材を用いるとよいか。私は初回授業までに、教材になりえそうなテキストを複数種類購入した。

 高校までのカリキュラムだと検定教科書が揃っている。副教材とよばれるものも多く出版されている。教材になりそうなテキストに当たりをつけることはそれほど難しいことではない。

 しかし、専門学校に検定教科書はない。「医療漢字・医療読解」という授業を開講している学校も多くはないため、教材となりそうなテキストもわずかである。今後、専門学校で「医療漢字・医療読解」を担当する方の参考に少しでもなるような情報を書いておきたい。

 

教材に採用したテキストたち

 まず、メインの教材にしたのは、以下のドリル。 

NEW看護学生のための看字ドリル+ちょっと計算 (0時間目のメディカルドリル)

NEW看護学生のための看字ドリル+ちょっと計算 (0時間目のメディカルドリル)

  • 作者: 今地ゆきみ,SENKOSHAメディカルドリル編集部
  • 出版社/メーカー: 宣広社
  • 発売日: 2014/10/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

  このテキストは、医療用語の読みと書きをテーマ別に分けてくれている。基本的な医療用語は書き、すこし発展的な医療用語は読みで出題されているため、予備知識がほとんどない生徒にとって取り組みやすい。また、それぞれの医療用語の意味を簡単にまとめているところもよい。

 教師-生徒ともに医療用語に疎いため、意味を合わせて示してくれているのは大変ありがたい。授業準備の手間が大幅に減る。

  次に、3回目くらいまでの授業で主に扱ったのは、『医療・福祉系の学生のための漢字100選』ウイネット。

www.wenet.co.jp

 この本は、Amazonでは取扱いがないため、みつけることに苦労した。だが、医療用語でよく用いられる漢字を100個とりあげて、それぞれの訓読みと音読み、意味、その漢字を使った熟語などを丁寧に扱っているため、ずいぶんと助けられた。

 いわば、小学校や中学校の漢字ドリルに近い形かもしれない。例えば、「睫」のページでは、「音読み:ショウ 訓読み:まつげ」「部首:目 画数:13画」「関連漢字 睫毛 (+その説明)」「こぼれ話 "こぶ"と"睫毛"」「熟語 睫毛反射 (+その説明)」がレイアウトよくまとまっている。すべてのページを授業で扱うことはなかったが、医療漢字を学ぶスタートには最適の1冊だったと思う。

あとは前任の先生が残した医療用語リスト

 以上の2冊をメインの教材として使いながら、あとは前任の先生が作成した医療用語リストを用いた。引き継ぎの話では、前任の先生も、そのまた前任の先生から引き継いだらしい。

 ただひたすら医療用語が並んでいるだけ。意味はもちろん書いていない。具体的には、下のような医療用語リスト。テーマ別に分けられている。

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 一応、解答も引き継いだため、それを使って答え合わせをすることができる。一つひとつの医療用語を丁寧に扱うことも大切だが、とにかく量が多いので、こういうリストを使ってひたすら暗記していくことも必要なのかもしれない。

(一人でこのリストをひたすら埋めるだけでは眠たくなること必須なので、授業ではグループワークにした。)

 

とにかく「にくづき(月)」

 僕自身、初めて教えた医療漢字だが、(そしてこの先も教えることはないだろう……)とにかく「にくづき(月)」がよく出てくる。まさに頻出漢字といえるだろう。

 それもそのはず。「にくづき(月)」には体に関する漢字が多い。まずは、「にくづき」の漢字を押さえておくだけでも生徒の抵抗感はずいぶん低くなる。「木偏の漢字をグループでたくさん挙げてみよう」から始まり、「次は、さんずいを考えてみよう」「最後は、にくづきを考えてみよう」のような活動をグループですると盛り上がる。

 あんまり意識したことがない部首も、漢字学習には大いに役立つことがわかった。来年から中学校で働いたときにも、部首の知識は必要になるだろう。ということで、部首の辞典も買っておいた。(あらゆる部首の成り立ちや意味についてまとめているので、おすすめ)

部首ときあかし辞典

部首ときあかし辞典

 

 

教材選びはいばらの道

 冒頭でも書いたが、小学校から高校までには検定教科書があり、副教材も多く出版されているため、教材選びを1から教師がする必要がない。しかし、専門学校や大学では教材を何にするかから教師は考えなければならない。それによって、授業は大きく左右されることになる。

 もちろん、授業の目標を達成するために効果的な教材を選ぶのが一番だ。しかし、実際には、教師の授業準備をいかに減らせるかや、レイアウト(見やすさ)、価格、手に入りやすさも関わってくる。

 さらに、他の教師や出版社との調整が必要だったりするとなると、、、それはもういばらの道だ。